早いもので共通テストから3週間が経過しました。明日から私立大入試が本格化する中、共テ利用方式の合格発表も近づいて来ました。
そこで今回は河合塾(Kei-Net)のバンザイシステムで判定に用いられる「共通テストリサーチボーダー得点率」の信頼性について検証を行ないます。
ボーダー得点率とは
河合塾では受験生の皆さんが高校に提出した共通テストの自己採点結果を独自に集計分析して各大学、試験方式ごとに合格可能性得点を算出しています。
その合格可能性得点はA〜Eランクに分かれていて、基準点の定義は河合塾のサイトによると
評価基準点(A判定~D判定)
A判定 合格可能性 80%以上
B判定 合格可能性 65%
C判定 合格可能性 50%
D判定 合格可能性 35%
とされており、Kei-net上に公開されたバンザイシステムに自己採点結果を入力することで合格可能性の判定結果が表示される仕組みになっています。
※高校によっては印刷して各受験生に配布しているかもしれません。
一方、ボーダー得点率の定義はこのように記載されています。
ボーダー得点/満点(率)
合格可能性が50%と予想される共通テストの得点、満点値、得点率(%)を表示します(満点値は国公立大のみ)。
この2つの定義を見比べてみると「ボーダー得点=C判定基準点=合格可能性50%」なのかなと思うのですが、実際の数値では「ボーダー得点=B判定基準点とC判定基準点の中間得点」となっています。
2つの定義と数値の間に矛盾が生じているように見えるので、この辺りについては河合塾の関係者の方に詳しく解説頂けることを期待しています。
いったんこの記事ではボーダー得点率は合格可能性が50〜65%あたりの得点率としておきます。
検証
大学
合格最低得点を公表している下記大学
- 青山学院大学
- 法政大学
試験方式
- 共通テスト利用方式
試験年度
- 2022年度
- 2023年度
利用データ
(1)共通テストリサーチボーダー得点率
- 2022年度版
- 2023年度版
(参考)2024年度版:2024年度共通テストリサーチ ボーダーライン一覧 | 共通テスト特集 | 河合塾 Kei-Net
(2)各大学の入試結果データ
検証方法
各試験方式ごとのボーダー得点率(A)と合格最低得点率(B)を比較し、A≧Bだった試験方式が全試験方式に占める割合(X)を算出します。
Xはボーダー得点で合格できた試験方式の割合を示しており、合格率そのものを示す値ではありませんが、信頼性を図るためには有効な指標と考えます。
また、AとBの乖離分布や平均値、中央値などを確認し、精度についても言及します。
結果
青学と法政を合算して集計したものがこちらです。概ね65%以上の試験方式でボーダー得点で合格出来ていることが分かります。
大学 | 年度 | 全試験数 | A≧B試験数 | X |
---|---|---|---|---|
青学+法政 | 2022 | 69 | 52 | 75.4% |
2023 | 80 | 55 | 68.8% |
下記は青学と法政それぞれを集計したものです。
大学 | 年度 | 全試験数 | A≧B試験数 | X |
---|---|---|---|---|
青学 | 2022 | 22 | 15 | 68.2% |
2023 | 32 | 19 | 59.4% | |
法政 | 2022 | 47 | 37 | 78.7% |
2023 | 48 | 36 | 75.0% |
法政の方が割合が高く出ているようです。青学は2023年度に4-6教科型を導入した学科が複数あり、データ量が不十分で予測精度が落ちたのかもしれません。
このように試験方式の変更などによっても精度がブレることは頭の片隅に入れておいて下さい。
続いて、ボーダー得点率と合格最低得点率の乖離の分布をヒストグラムで確認します。
グラフは(若干マイナス方向に偏りつつも)0%を中心とした正規分布的な形状をしていて、精度の高さが窺えます。
2022年度
2023年度
※乖離 = 合格最低得点率(B) - ボーダー得点率(A)
※横軸の(●●,■■]は●●%超〜■■以下を表します
※縦軸は試験方式数
そして合格最低得点率とボーダー得点率の乖離を整理したものがこちらです。
大学 | 年度 | 平均値 | 中央値 | 最大値 (上方乖離) |
最大値 (下方乖離) |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|
青学 | 2022 | -0.7% | -0.5% | 2.3% | マーケティング3 | -4.0% | 法3 |
2023 | 0.4% | -0.2% | 9.5% | 社会情報4B | -6.2% | コミュ人科3 | |
法政 | 2022 | -1.6% | -1.3% | 7.4% | 臨床心理C | -7.0% | 政C |
2023 | -1.2% | -1.4% | 4.4% | 哲C | -6.3% | 人間環境B |
平均値/中央値とも0〜±1.5%程度ですので、やはり算出精度はそれなりに高いと言えると思います。
参考に上方/下方乖離が大きかった学科、試験方式を記載しておきました。
結論
河合塾がバンザイシステムで合否判定に用いるボーダー得点率の精度は非常に高いと言えるでしょう。
B判定とC判定の中間得点であるボーダー得点率での合格可能性は65%以上ある可能性が高く、B判定寄りのC判定であれば70%以上の可能性もありそうです。
一方、数は少ないながらも実際の合格最低得点から大きくかけ離れた数値になる場合もありますので、油断せずに明日からの大学独自試験にも臨んで下さい。
明日は関東では雪の予想もあり、交通の混乱があるかもしれません。受験生のみなさんが実力を発揮できますよう。
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